就業規則に基づく労務管理のポイント詳細

就業規則に基づく労務管理のポイント
管理職が就業規則に基づいて部下指導することは、労務管理の基本です。これができないというマネジメント欠如の状態を放置すると、労使トラブルを未然防止するころか誘発する事態に陥ることも考えられます。会社経営上のリスクとなります。
以下、管理職が、部下指導に生かしてほしい項目を列挙しますので、参考にしてください。

(1)従業員の分類⇒職員、嘱託、契約従業員、パートタイマーの違いと就業規則上の位置づけを説明できるようにする。

(2)服務規律の中身の理解と確認
必要な守るべき服務のルールが網羅されているかをよくチェックしておく。セクハラ・パワハラを懲戒解雇事由になっている場合は自らも注意する。 
・病欠等で1週間以上連続して欠勤するとき診断書の提出を義務づけ診断書の費用を社員負担と規定がある場合には、その旨よくあらかじめよく説明しておく。
・退職の際、有給休暇の消化を申しでる社員が多いが、休職、退職、異動の際の「業務引継」を義務づけしている規定がある場合、この「業務引継」が優先することを、日頃から理解させておく。
・秘密保持義務⇒秘密情報の開示、漏洩、社外持ち出しの禁止、退職後の返還義務については日頃からよく指導しておく。(退職後の秘密厳守、退職後の競業避止義務を定めている場合も同様)

3)労働時間、休憩、休日等についての留意
①労働時間、休憩の留意点
・始業時刻は、会社の指揮命令に基づく実作業開始時刻であり、終業時刻は、会社の指揮命令に基づく実作業終了時刻であること。会社の指揮命令に基づかない時間は労働時間ではないことに注意。
・労働時間、休憩、休日の労基法の規定の適用除外される者は?
 ⇒管理監督者(労基法41条)であるが、管理監督者に該当する管理職は、管理職であっても深夜勤務(深夜業)に関する規定は除外されないので注意する。
・1日の労働時間が6時間以内であれば休憩を与えなくてもよい。1日6時間超となる場合は休憩45分以上、8時間超となる場合、1時間以上与えなければならない。
・休憩は労働時間の途中での付与と一斉付与と自由利用が原則です。
労基法34条に規定の運送業等の特殊事業ではない一般企業の場合、休憩の一斉付与の原則を逸脱すると、休憩ではなく労働時間とみなされ場合があるので注意する。(昼の休憩時間に電話番を交代でさせることなど)ただし、合理的理由がある場合には労使協定を結べは例外の設定は可能。
・社員が休日勤務で6時間超の労働時間となる場合、所定の休憩時間をとることを事前に説明しておく。

②休日についての留意点
・法定休日はかならずしも日曜日ではない場合があるので、法定休日と法定外休日の決定基準を確認しておく。(労基法35条では、法定休日を「毎週1回以上、もしくは4週で4日以上」と定めているのみ)
・法定休日を明確にに規定していない場合、週休2日制であれば土日のいずれかが法定休日となり、いずれかが法定外休日となる。法定外休日勤務の割増賃金は25%増だが、法定休日は35%増となるので、この点を踏まえ休日勤務を設定する必要がある。

③振替休日と代休の違いとその運用についての留意点
・振替休日は、休日を出勤日として、指定した平日を休日にするだけである。代休は休日に出勤した事に対して後日、休みを与えることであり、両者は根本的に異なる。
・本来、代休は、緊急、突発的な事由で出勤してもらい、後で休みを与えるので、極めて例外的に取り扱われるべきもの。突発的でないものは、休日の変更を事前に指定できるので振替休日で対応する。
・振替休日を与える場合、週休2日制では、振替休日を出勤日となる休日と同一週に取らせること。翌週になると週40時間を超えた部分は時間外労働となるので注意する。業務の都合で振替休日を設定できないときは、法定休日の場合は休日労働で対応する。法定外休日の場合は時間外労働として対応する。
1年の変形労働時間制の場合は、特定期間以外であれば連続6日の労働日数の制限があるので、これにかからないように休日出勤日を設定すること。
・代休の場合は、休日出勤の事実は消えないので、後日、休日を与えることにより勤務していない1日を控除すことになる。よって法定外休日の場合は25%、法定休日の場合は、35%の割増賃金の支払が生ずることになる。

④時間外勤務と休日勤務についての留意点 
・時間外勤務、法定休日労働は、36協定の届出がでていないとさせてはならない
・36協定の内容は確認しておく。(時間外労働は月42時間、年320時間。法定休日労働は月2日までなどはその一例) 
さらに、特別条項付き36協としている場合にはそれも内容を確認しておく。(通常の生産量を大幅に超える受注が集中し、特に納期が逼迫したときは、労使の協議を経て年6回を限度として、月66時間まで、年648時間まで延長することができるなどその一例) 
この特別条項は、突発的事由に対する場合に限定されているので、通常は、月42時間年320時間(通常の36協定に規定されている時間例)に収束させる必要があるのでこの管理が重要となる。
・時間外勤務および休日勤務は、社員の申請にもとづき管理職が承認した場合に初めて時間外労働となる。社員の自発的残業や管理職の指示のない黙認による残業はさせてはならない。黙認している場合は労働時間とみなされるので注意する。
・時間外勤務や休日勤務の割増賃金はどう計算するのかはおさえておく。
 ⇒通常の時間外労働 25%増 深夜労働(10時~5時)25%増
  時間外労働が深夜に及んだ場合 深夜労働部分は50%増となる
 ⇒法定休日勤務 35%増 法定外休日勤務 25%増
  法定休日勤務が深夜に及んだ場合、深夜労働部分は60%増
  法定外休日勤務が深夜に及んだ場合、深夜労働部分は50%増

(4)年次有給休暇制度についての留意点
年次有給休暇を認める時の留意点 
・社員は、有給休暇の申し出について原則1周間前までに、少なくとも前日の退社時刻までに申請手続きをしなければならないと規定している場合、当日の有給休暇取得申請は認めない。通常、欠勤、遅刻早退、離職(私的外出)となる。ただし、管理職に申し出て管理職がやむなしと認めた場合は、これらを有給休暇に振替える事ができる。(欠勤・遅刻早退・離職(私的外出)を有給休暇へ振り替えできる規定がある場合)
・年次有給休暇の付与条件(勤続年数別付与日数、8割以上出勤率)については理解しておく。
②会社に有給休暇の時季変更権があること。
・社員が有給休暇を取りたいと申し出がある場合、原則、理由如何を問わず与えなければならない。(労働者の「時季指定権」)
一方、会社には「時季変更権」があり、その日に休まれると事業の正常な運営に支障をきたす場合、有給休暇の日を変更させることができる。社員が申請してきた有給休暇には、この時季変更権があることを忘れないこと。有給休暇取得の申し出があった時には業務運営に支障をきたさないかなどよく確認してから申し出に応じること。
ただし、この時季変更権が使えるのは、一般的に「業務運営にとってその社員が不可欠」「繁忙期で担当業務がとても忙しい」「代替要員の確保が難しい」などが判断基準とされているので、権利の濫用とならないよう注意する。

③その他知っておくべき事項
・有給休暇は何年で時効により消滅するのか?⇒2年の消滅時効にかかる。
有給休暇の残日数がある場合には、翌年度に限り繰り越すことができる。

④時間単位の有給休暇制度の留意点
(時間単位有給休暇の取得が可能な場合)
・1時間単位の有給休暇の取得が可能な上限は年5日である。
(1日の所定労働時間8時間で年40時間、1日5時間のパートタイマーの場合は1日5時間で年25時間)が限度となる。
・取得手続きや会社の時期変更権等すべて、一般の年次有給休暇と同様の取扱となる・1日5時間以内にせよとの運用はできるか?⇒できない、ただし、業務の正常な運営に支障を来す場合には、個別に、時間帯を変更してもらうことや日を変えてもらうことはできる(時季変更権の運用として)
・欠勤・遅刻早退・離職(私的外出)が賃金控除の対象とる場合は、通院などで遅刻早退、離職などに適用可能であるため社員にはメリットのある制度である。

(5)各種休暇・休業時の賃金支給の有無
・年次有給休暇、特別休暇、生理休暇⇒賃金支給あり(特別休暇は一部例外あり)
・産前産後休暇、育児休業・介護休業期間、休職期間⇒賃金支給なし
ただし、出産手当金(健康保険)育児休業基本給付金・介護休業基本給付金(雇用保険)が所定の申請をすれば支給あり。
さらに、産前産後休暇と育児休業期間には、社会保険料免除制度がある。

(6)休職と復職についての留意点
・業務外の傷病による休職期間はどう設定されているのかや欠勤の中断と見なされるには、何日間出勤しなければならないかなどは押さえておく。
・休職期間中の役職、賃金等の取扱はどうなるか?⇒役職は解かれ賃金の支給はない
など規定を確認しておく。
・復職するための条件は?
 ⇒一般的には社員から復職願の提出を受け、会社が判断し許可する。
・医師の治癒証明書は、従業員のかかりつけの医師の証明書で十分か?
 ⇒会社は、かかりつけの医師から意見を聴いたり、更に会社の指定する医師から
診断書の提出を求めることができる規定となっていることが望ましい。
・どのような時に復職が取り消されるのか、その場合、休職期間に通算されるのかまた、復職日から○か月(休日を含む暦月)を経過しない間に、同一傷害又はそれに類する傷病を発症し欠勤した場合には、復職を取消し、発症後の欠勤期間を休職期間に通算する規定になっているかなどのチェックは必要である。
・メンタル疾患者の休業、復職をめぐる訴訟が増加しているので、判例の動向には注意しておく。

(7)解雇に関する留意点 
・解雇基準が規定されているので理解しておく。
・社員を解雇できない時はどういう場合があるか?
 ⇒業務上の傷病で療養のため休業する期間とその後30日間
  産前産後の女性が休業する期間とその後30日間
・解雇予告とは?
 ⇒従業員を解雇する場合は、30日前に予告するか、30日分の平均賃金を支給する
・懲戒解雇で即時解雇する場合、解雇予告手当を支払わなくてもよいか? 
 ⇒行政官庁の認定を受けない限り支払わねばならない。  
・解雇予告手当を支払わなくてもよいのはどんな場合か?
 ⇒試用期間中の者で採用後14日以内に解雇する場合
・懲戒の種類や懲戒事由なども把握しておく。
・解雇については、デリケートな問題となるので十分慎重に対応する。幾多の判例もでているので、よく整理しておく必要がある。

その他、育児休暇や介護休暇や女性の母性健康管理措置、母性の保護規定についても理解を深めおく。

このように管理職が押さえておくべき事項は多岐におよんでいます。
当事業所では、管理職向けの労務管理研修も用意していますのでお気軽にお声かけください